ゴーストバスターズ リブート版
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ポリコレでつまらなくなったとも言われてるみたいだけど、ポリコレが不十分な作品の間違いでは……。 まず作品として、登場するキャラクターは全員悪くはないし、むしろキャラはそれまでのシリーズ作よりも立ってたし、アビーもホルツマンも見た目からして大好き!しかないんだけど、なんだろう、この「置いてかれてる感」は……と。自分が男だから?それは間違いなくあるとは思うけど、どうもそれだけじゃないような。
まずポリコレについてだけ言うと、女性を主人公に据えてるのでさすがに以前のような性差別描写はない。それはいいんだけど、今度は女性が、受付スタッフの面接を受けに来た男性=ケヴィンに「いつも会ってる人はいる?」、つまり彼女はいる?みたいなことを質問していて、それハラスメントやん……とドン引き。作中でも「それは労務上問題ある質問だからまずい」のようなツッコミはあるものの、ツッコミ入れたら、相手が男性ならやってもいいのか??と。男性と女性と入れ替えたらこういうことしてきたんだよ、あんたらは!!ってのはわかるし、そういう啓蒙=気づきのためにあえてしてるシーンなのかも……などと考えるんだけど、それでも引っかかる。
受付「嬢」をすんげーおバカな男にしたのも同じで、たぶんこれ「受付の女はバカだって表象してきたけど、逆やられるとどうか見てな!」的な啓蒙的なところもあるんだけど、先のハラスメント面接が引っかかって頭に入ってこない。
あと、今回も「ゴーストバスターズの法則」は当てはまってて。つまり敵のローワンはチビめの非モテなんだよね。なんなら髪も少しモジャ目で、1のルイスと2のヤノシュを足したようなキャラデザイン。で、これに対してアビーが「ほら、あんたの童貞がここに落ちてるよ」のような揶揄というか、挑発とかしててちょっと待て、そいつはダメだろうと。 過去作は敵を異教徒にしたり共産国の霊にしたりだったけど、今回はインセルになっちゃってるよね。インセルVS女のような対立ってどうなのよ?そこはもっと安全に、しかも喝采をもって迎えられる描き方もあったのでは。たとえば家父長制と戦うみたいな……。でもそれやるとポップコーンムービーとしては重すぎるので、「モテなくて悩んでるチビがゴーストの力を借りてNYを破壊するのを女たちが阻止」の形にしたかったんだろうけど。
ゴーストバスターズの人種構成も白人3黒人1で変わりなく、黒人は信心深いキャラみたいなのもいじらず(白人三人だけ大学の研究者)。「初代はいいけど差別的だったのでポリコレでアップデートしたぜ!」と言うにはあんまりにも不十分という感じなんだよね。
アクションシーンは過去作一よくできててカッコよ。ホルツマンがゴースト倒すシーンとか、質量が多いアビーが風船みたいに空中を飛んだり、投げ飛ばされるシーン最高。
ただなあ。それで行くとエリスのキャラが弱すぎる。ピーターの女版ということでいくと、あの独自の言葉遊びの感覚や、クールな感じがまったくなく、もっと言えばキャラが弱いので、どうしても話の展開がアビーとホルツマンのコンビ中心になる。
さらに悪いことに、過去のトラウマみたいなエピソード入れられちゃってさ。エリスは昔ゴーストが見えたんだけど、誰も信じてくれなかった……みたいなこというのよ。そうした「深み」だけは持っちゃってるんですよ。初期作のピーターのキャラの何がいいかって「トラウマ」とか「苦しかった過去」みたいなんがなーーんもないとこ。大学いきなりクビになってるのに、まったく悩まない。なりゆきで、お仕事で、食うために、ダルいけどゴースト退治してるだけ。そのカラッとしたとこがゴーストバスターズのよいとこなのに、エリスにはそれがない。
初代ゴーバスの楽しいとこの一つは、ゴーストをどんどん退治してくシーンだと思ってる。それにともない、どんどんゴーストバスターズがテレビに出たりタイムズの表紙飾ったりして有名になるでしょ。要するにあれ、起業家ムービーでもあるのよ。ベンチャーがどんどんのし上がっていく気持ちよさ。初代ゴーバスはあれ、ビジネスだからさ。
でも、リブート版ではそれが薄い。「成り上がり」の描写がないから、その後の盛り上がりにもかけるし、ゴーバス名物「ゴーストバスターズ!ゴーストバスターズ!」のシュプレヒコールをバックにゴーストと戦う!がないんだよね。「モテない、キモい、仕事も無くした非モテのくたびれたおっさんが、生きるためにダサい恰好でゴースト倒すと言う汚れ仕事でも続けてやってれば名声も評価もついてきて、最後は街を守るヒーローにだってなれる!」ってのがゴーバスの最も中心にあるアメリカイデオロギーであり、それが気持ち悪くもあるけれどやっぱりどこかとても気持ちいい!ってところでもあるのに、それがない。
シリーズ作とのネクサス織り込みはとてもいいですね。ビル・マーレーやダン・エイクロイドが端役で出演してるし、ダンエイクロイドにいたっては「I’m afraid of no ghost 」(テーマ曲の歌詞)とまで言ってる。 極め付けはラストでビルに「I ❤GB」と表示されるっていう。これは初代ゴーバスで、ウィントンがラスト「I love this town!」って叫ぶんだけど、それに対する30年越しの見事なアンサリングになってる。
結局ここまで見て自分にとってのゴーバスは初代に尽きると痛感。ビルマーレーの、ピーター・ベンクマンというあのキャラの魅力なんだなと。
moriteppei.icon「I ❤GB」のオチはとてもいい。「女性にハラスメントはダメだから、じゃあ男性にセクハラ面接するか!」「男女逆転すればオッケーでしょ。パッパラパーの受付嬢だと問題だが、受付男子だったらおっけーじゃん!」→オッケーじゃないでしょ....っていうね。